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講義が終わった。僕も自分の気持ちに決着をつけなければならない。再び拳を握り鞄に全て荷物を入れ直した。
「美味しいね、ここのガーリックトースト」
彼女は素手で掴んだまま一口、齧っていった。
僕達は早速店に入ってガーリックトーストを頼んだ。何でもこの食べ物は洋食屋には必ずあるもので、これを食べれば店の料理人の感覚が掴めるらしい。
顔立ちは上品なのに、食べ方は荒い。パンだからこそいいのだろうけど、それがまた妙な色気を醸し出している。
「ん?どうかした?」
「いえ……」
僕は泥棒を働くねずみのようにちまちまとしか食べられずにいた。彼女とは何度会っても慣れることはなく緊張してしまうのだ。
「お、やっときたみたいだよ」
そこに出てきたのは明太子カルボナーラというパスタだった。カルボナーラに明太子が固まりで載っており、それを混ぜて食べるものらしい。
彼女は早速、トングでぐるぐると全体的に混ぜていった。その手際のよさになんともいえない気持ちを覚える。僕はこいつと同じだ。彼女の皿の上で適当に弄ばれている、このパスタと同じ心境だ。
「はい、どうぞ」
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