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「私、実はパスタ作れないの。お店でもただウェイターをしているだけ」
「え?」
僕が考える暇もなく、彼女は一口だけポカリを飲み続けた。
「だってそうでもいわないと君は来ないでしょ」
そんなことはない、と思っていたが、あながちそうかもしれない。僕は臆病なのだ、彼女といる時間が幸せなのに、それを彼女に悟られないように努力している。
僕の恋心のせいではない、失いたくないのだ。彼女を。
「……僕は……」
ここで思いを伝えてしまってもいいのだろうか。ダメなら諦めるしかなくなる。このまま彼女と連絡が取れなくなったらプールにも行けなくなるだろう。
僕の生活はもう彼女なしでは始まらなくなってしまっている――。
「……」
ここは我慢しなくてはいけない、でもそれもまた苦しい。彼女へ思いを伝えるためにきたのに我慢しなくてはいけないなんて、なんという拷問だろう。
「……ねえ、もう一つだけ嘘ついてもいい?」
彼女は妖艶な瞳でこちらを見る。彼女はブランコから身を乗り出してこちらの鎖を掴んでいった。
「いいですよ。嘘だとわかっていれば、それは嘘にはなりませんから」
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