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「こわい……!」
今では忘れかけてきている自身の声をきちんと認識したのは、これが最後だった。持て囃され、時に羨まれ、褒められた天使の声は、荒々しい波に飲み込まれて消えてゆく。
音のある青は、音の無い青になってしまった。
そして煌めくブルーは、輝きの無い無彩色へと変化した。
「ごめん、海」
何故謝罪の言葉が口を突いて出たのか、自分でもよく分からない。もしかすると僕は、海が死んでしまうという未来を汲み取っていたのかもしれない。悪い予感を無意識に感じ取って、一人だけ生き残ってしまう申し訳なさに対して、彼に許しを乞いたかったのだろう。
ごめんなさい。
…許して、ううん、許さなくていい。
意識が消失する寸前に脳裏に浮かんだのは、「次目覚めた時に変わらぬ世界でありますように」という切実な願いだった。
「翡翠の夢は?」
「僕の、夢?…うーん、誰をも感動させられる声優になることかな?でもその為には、顔出ししなきゃ駄目かなあ…」
「えー、俺翡翠が芸能人になんの嫌だなー。いつまでも謎のままでいて欲しい」
「いつまでも謎って、何それ…。それに芸能人になるなんて一言も言ってないし」
「とにかく!いつまでも俺の為の翡翠でいて欲しいんだよ」
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