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そんな群衆に物言わぬ背中で別れを告げつつ立ち去る自撮り棒折るマンに、観光客から惜しみない感謝の言葉がかけられた。
「ありがとう自撮り棒折るマン!」
「頑張ってね自撮り棒折るマン!」
「負けんなよ自撮り棒折るマン!」
「ああ…負けはしないさ。君達のようにマナーを守る観光客がいる限りはな…さらば!」
そして自撮り棒折るマンは一陣の赤い旋風と化して、未練ごと置いていくかのようにその自然公園から姿を消した。その場に残されたのはジドリアンだった者達と折れた桜、そして万雷の拍手喝采だけだった。
~*~
昨今のスマートフォンの目玉機能の一つ、カメラ。画質が下手なデジタルカメラよりも画質がよいものも珍しくはなく、誰でも手軽に高画質な写真を撮る事ができる、一つのコミュニケーションツールとしての地位を確立している。
しかし、その手軽さ故に人は時に過ちを犯す。心【マナー】なき利用者の手によって、大多数の常識人が迷惑を被る時は悲しくもやってきてしまうのだ。
そんな時勢だからこそ、今こそ我々はあのヒーローの生き様を見習い、そして勇気を持つべきなのだろう。
スマートフォンを否定するのではなく、それを悪用し他人に迷惑をかけるジドリアンと自撮り棒を滅砕する、正義の紅きヒーロー、『自撮り棒折るマン』。この世にスマートフォンがある限り彼の闘いは終わらないが、正しくスマートフォンを使用しようとする者がいる限りもまた、彼は負けはしないだろう。
戦え、自撮り棒折るマン! 負けるな、自撮り棒折るマン!
世界から悪しきジドリアンを放逐し、良識【マナー】あるユーザーで満ち溢れるその日まで!
そんな理想の日々が訪れる事を祈りながら、今日もこの世のどこかで自撮り棒折るマンは、ジドリアンの自撮り棒を折る――。
=完=
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