風光明媚☆自撮り棒折るマン

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風光明媚☆自撮り棒折るマン

行楽シーズン真っ只中の、桜が美しく全国放送でも紹介された某自然公園。連休という事も相まって、その絢爛に桜が咲き誇る地には数多くの観光客が押し寄せていた。そこにいる誰もがその美しい桜に魅了され、顔を綻ばせながら平和な一時を過ごしていた。 しかし、突如そこにそんな雰囲気に似つかわしくない悲鳴が挙がる。 「や、やめろ!他の観光客の迷惑だろう!」 「イェーイ!ピースピース!イ○スタにあげなきゃなぁ!」 その声の発生源を見やると、桜の枝をしかと握って自分の顔の近くまで引き寄せ、スマートフォンを伸縮自在の棒に装着して自分を撮影している若い男と、それを止めようとする管理の係員がもめているようだった。その騒がしさに、公園に広がっていた和やかな雰囲気に影が差し込み始める。 「だから止めないか!もし折れでもしたら器物損壊罪で訴える事も出来るんだぞ!しかもこの公園、自撮り棒は持ち込み禁止だと…!」 「うるせぇなぁ…俺達は観光客なんだぜ!SNSの知り合いにもすでに伝えてあんだよ…俺の写真を楽しみにしてる奴らが何百人といるんだ!だから少しくらい良いじゃねえか…なぁ!」 そして、自分のカメラに収まるのが我慢ならないと言わんばかりに、その男は係を肩で押しのけた。係は桜の木の下でうずくまり、涙すら浮かべて空を仰いだ。 「く…くそう…!誰か!誰か助けてくれぇぇ!!」 桜色の花弁と対になるコントラストの青空に、男の叫びが木霊する。するとその刹那、一陣の風と共に桜の花が散り、空へと舞い上がった。 「おい」 すると、どこからか若い男の声が聞こえた。決して大きくはないが、言葉に孕んだ怒りと正義感が、喧騒に包まれた観光地でもしかと聞こえたのであった。 「楽しい花見の季節だというのにだ…この風光明媚な風景と風紀を壊そうとする不届き者!『ジドリアン』が現れたようだな!!」 そして、その声の主は件の桜の木の横に降り立つ。その姿は極めて珍妙で、一言で言うならば「ヒーロー」であった。赤い全身タイツを身に纏い、顔も真紅のフルフェイス。純白のベルトのバックルには金色で「SSB」と彫られた装飾が施されている。桜の舞う自然公園の中に突如現れたヒーローに、周りの観光客は子供を中心に特にざわめき出す。 「な、なんだアイツ…あの日曜日の朝によく見る感じのデザインは?」 「ヒーローショーなんて聞いてないぞ」
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