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手首を回すようにして両手の自撮り棒を弄ぶムサシ。その挑発のような動きに乗せられて、自撮り棒折るマンは動く。一足飛びでムサシの目前まで接近すると、大地ごと打ち砕かんばかりの勢いで拳を振り下ろした。
しかしムサシは、一方の自撮り棒を最大限まで勢いよく伸ばして地面に突き立てると、その勢いで自撮り棒折るマンの頭上を跳躍。拳を叩きつけられて砕け散る瓦礫すらも尻目に、自撮り棒折るマンの背後へ軽やかに着地した。
「何ッ!?」
「そして俺はこんな事も知っているぞ、自撮り棒折るマン!」
すると何を思ったか、ムサシは再び驚愕の声を挙げた自撮り棒折るマンの肩に腕を回し、伸ばした自撮り棒を高く上に掲げてフレームインする。取り付けられたスマホに赤いランプが灯り、フラッシュが閃光弾のように焚かれた。
「ぐぼぁっ!!!」
刹那、自撮り棒折るマンの仮面の口元から鮮血が溢れだし、桜と瓦礫が散らばる芝生の上でもんどり打って悶絶し始めた。ギャラリーからは悲鳴が挙がり、ムサシの高笑いも響く。
「フッハハハハ!そうだ!貴様のパワードスーツは自撮り棒を破壊する事に重きを置きすぎたあまり防御面は紙装甲、裸同然!それどころかスマホで撮影されるだけでも絶大なダメージを負う事という事もお見通しなのだよ!なあ自撮り棒折るマン…お前がこれほど観光地に現れているというのにSNSやネットで知られていないのはそれも理由の一つという訳だよなぁ?図星だろう?」
勝ち誇ったように言うムサシ。その声を聞きながら、自撮り棒折るマンは血の塊を吐き出しながら震えつつ立ち上がる。その拳は固く握られ、まだ戦闘続行の意志があることを証明していた。
「だったら…だったらなんだ!撮られる前に貴様の自撮り棒を破壊すればいいだけの事よ!!」
「ふっ…違いない。だが、その傷ついた体でこの俺の撮影から逃れられると思っているのか!?」
そしてシャッターを切るムサシ。自撮り棒折るマンが反射的に跳ぶと、その足元の芝生が爆ぜた。そして自撮り棒折るマンはそのままジグザグ状に駆けながらタイミングを覗い始め、その時々で芝生や桜の幹が抉り取られる。
「無駄無駄!俺のスマホのカメラは手ブレ補正つきだ…素早い動きで撮れないようしているようだが無駄な足掻きだ!」
次の瞬間、ムサシは自撮り棒を伸ばしてシャッターを切る。しかし狙いは外れ、何かが爆ぜる音がした。
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