風光明媚☆自撮り棒折るマン

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「バッ…馬鹿な!何故即座に撮影できなかったというのだ!?」 「貴様のカメラの設定を『オートフォーカス』に変更しておいたぜ。随分拘りがあるみたいで、手動調整になっていたがな」 桜の巨木から身を引きずり出しながら、自撮り棒折るマンは平然と言い放つ。 「手動でピントを合わせるのに比べ、自動だと少々時間がかかる。そのわずか数秒さえあれば、その自撮り棒を粉砕するのなど容易い」 「てっ、てめえ…!さっき俺が一緒に撮影した時、吐血に乗じて画面を操作したというのか…!なんてスマホの扱いに長けた男なんだ…!」 「俺は元々携帯ショップの店員だったからな!派遣社員を舐めるなよ!!」 自撮り棒折るマンは自ら出自を明かすと、猛然と駆け出してムサシの自撮り棒目掛けて飛び蹴りを敢行。ムサシは紙一重で身を捻って回避し、その横の空気が切り裂かれる。そしてその回転のまま自撮り棒を振り抜くが、自撮り棒折るマンはしゃがんでその一撃を回避した。そこにのみ春の嵐が吹き荒れるかのような猛攻が繰り広げられ始めたのだった。 「携帯ショップの店員…だとォ!?そんな仕事がありながら、何故こんなヒーローの真似事をしてやがる!」 「理由は二つある!一つはこの『自撮り棒折るマン』の適合者は観光庁管轄の職員…つまり公務員の肩書を得られるからだ。派遣社員よりずっといい!」 「そんな理由で…ふざけるな!」 ムサシは激昂し、自撮り棒を最大まで瞬時に伸ばして自撮り棒折るマンの顔面に突きを放つ。しかし自撮り棒折るマンは跳び上がりながら身を捻ると開脚し、ムサシの腕に抱き付くようにホールドをかける。 「そして二つ目!それは俺が携帯ショップの店員をやっていたからこそだ!」 そしてそのまま巻き付くように回転すると、ムサシの腕が自撮り棒を軸に万力にでも引き込まれたかのように回転して体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。 「なっ…何ィィ!」 そして自撮り棒折るマンが背中に乗り、自撮り棒を握って背中の後ろへと回す。結果的に腕がきめられて肩が悲鳴を挙げるが、それでもムサシは自撮り棒を離さなかった。 「店員をやっていた時…貴様らジドリアンが誤った用法でスマホを乱用し観光地に迷惑をかけていると聞いていた。正しい用途を守れば素晴らしいツールだということを、スマホではなく『自撮り棒』のみを破壊する事で証明する。それが俺の使命だ!!」
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