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「自撮り棒を壊す事で、だと…?笑わせるな!お前がやっている行為は、観光客を脅かす暴力行為なんだぞ!」
「傍迷惑な自撮りを敢行し!食い物飲み物を散らかし!ゴミを拾おうともせず観光地を汚す貴様らジドリアンが!自分を棚に上げてよく言うものだ!」
「うるせぇぇぇ!!」
ムサシは肩が外れるのも厭わないとばかりに腕に力を込め、無理矢理自撮り棒折るマンを背中から引きはがす。そして勢いよく立ち上がると、スマホのシャッターを目の前の自撮り棒折るマンに向けた。
「俺の…俺達の楽しみは邪魔させねえ!自撮りという素晴らしき自己表現の場を!奪われてたまるかぁぁ!!」
そしてまたも素早く指が伸び、画面に触れようとした。だがそれ以上に速かったのは自撮り棒折るマンの白い拳だった。フレームから外れるように身を捻った勢いを利用した自撮り棒折るマンはそのまま裏拳で自撮り棒のスマホ装着部分を打ち、自撮り棒を跳ね返らせる。ムサシは慌ててその跳ね返って来て凶器と化した自撮り棒をタッチしようとした手で掴んで止めるが、結果的に自分の自撮り棒の両端を両手で掴む形になってしまった。その姿勢はさながら、自ら「折ってくれ」と言わんばかりの恰好であった。
「自己表現の場なんぞいくらでもあるだろう。それこそ人に迷惑をかけずにやる方法がいくらでもな…」
「し…しまった!!このポーズはまずい!!」
手から自撮り棒を離そうとした刹那、自撮り棒折るマンの姿が再び赤い光と化した。元よりクロスレンジであったその間合いがコンマ1秒で詰められ、その烈火を体現したかのような正義と義憤の赤い膝が、唸りを挙げて空を切る。
「その自撮り棒が絶妙に折りやすい姿勢が崩れる前に片を着けてやろう!!俺の膝は大地を砕き!!海を割り!!そして何より…自撮り棒をへし折る!!!ジドリアンの野望と共にな!!!」
そして芝生が裂ける程の勢いで跳躍すると、赤い疾風を撒いた膝を突き出したままムサシに肉薄。一方のムサシは最後まで怒りと焦りに満ちた表情を浮かべていたが、非情にもなすすべもなく自撮り棒の中心に自撮り棒折るマンの剛膝が炸裂。中央から破断するに留まらず、その核弾頭が直撃したかのような勢いによって瞬く間にスクラップにされていく。
「ぐ、ぐああああああ!!!」
砕け散る自撮り棒の痛みを体現したかのようなムサシの絶叫が、春の晴天の下に木霊した。
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