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「うわ!!」
思いがけず、転びそうになった。
めったに転ばない私が!と、ふと足元に目を遣ると…。
「サンダルがああああっ!!」
サンダルの底がベローンと大きく剥がれてしまっている。
見るも無残なその姿に、私はガックリと肩を落とした。
「う~、このサンダル気に入ってたのに」
まさか底が剥がれるなんて。
可愛いと思って即買いしたけど、結構安かったもんなぁ…とサンダルを買った時のことを思い出す。
しかし、このままショック受けていても仕方がない。
私は家に帰るために、歩き出そうとした。
「うっ」
歩く度に、剥がれた底がコンクリートに引っ掛かって転びそうになる。
バランスを取るのがかなり難しい。
そして何より──人目が気になる。
壊れたサンダルを引きずってヨロヨロ歩いている姿は、かなり不格好だ。
裸足になろうかとも思ったけれど、夏のコンクリートの熱は、素足には耐えられない。
私はズルズルと歩きながら、途方に暮れていた。
「どうした?」
声がした方に顔を向けると、そこに斎の姿があった。
天の助けとばかりに、私は斎に泣きつこうとそちらに足を向ける。
その途端、剥がれた底に足を捕られた。
「うぎゃっ!!」
変な叫び声をあげて、私は大きくバランスを崩す。
間違いなくこけると思った。
しかし、私の身体は宙に浮いたまま。
いや…正確には、咄嗟に差し出された斎の腕に支えられていた。
「何をやってるんだ…」
斎は呆れたように呟く。
そんなこと言ったってさ。しょうがないじゃん。
私が悪いんじゃない。サンダルが悪いんだっ!!
「サンダルの底が剥がれちゃったの!!」
まるで駄々を捏ねる子供のような口調になった。
斎の前ではつい、昔のクセが出てしまう。
親や友達の前では見せなくなったこういった部分も、何故か斎にはいまだに見せてしまう。
それはきっと、私よりずっと速いスピードで大人びた表情をするようになった斎にも責任はあると思う。
斎は私の足元を見た。
…う。
そんなにマジマジ見られると、何だかとっても困るんですが。
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