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異性の幼馴染というのは、とても厄介な代物だ。
小さい頃はただの仲良し。そのうち疎遠になっていくもの。
しかし、疎遠にならなかった場合──。
年頃の男女に“友情”は存在するのか。
存在してほしいと思っていても、いざ自分に置き換えてみると難しい。
私、香月舞(かづき・まい)の幼馴染というのが、とても出来た、いや、出来すぎなくらいの人物なのだ。
まず、礼儀正しい。幼い頃から品行方正を絵に描いたような礼儀正しさに、周りの大人達はメロメロだった。
次に、スポーツ万能。特にテニスに秀でていて、高校生になった今では名の知れた強豪校に通っている。部長らしい。
にも関わらず、成績優秀。一体いつ勉強しているんだと頭を捻りたくなる。
部活の練習がかなりハードなはずなのに、成績も常に上位をキープしているというのだから嫌になる。
トドメは、眉目秀麗。
物心ついてからは、常に女の子が彼の周りにいたのを目にしてきた。
笑ってしまうくらいの四文字熟語のオンパレードな上、面倒見もいいとくれば、ダメ押しもいいところだ。
しかし、惜しむらくは、その仏頂面。
お世辞にも社交性があるとは言い難く、周りに騒がれるのは本人的にものすごいストレスらしい。
幼い頃は何とか頑張っていたようだが、年を経るにつれ、そちらの努力は止めてしまった。
そして現在。
彼の周りは昔に比べて静かになった。
でも私は知っている。
単に近場で騒がれなくなっただけで、遠目から女子にもてはやされ、しかも今ではテニスをやっている男子からの視線も集めている。
私の幼馴染、篠宮斎(しのみや・いつき)。
昔から、私は、大人からも一目置かれるような斎を頼っていた。
同じ年なのに、まるで兄のように慕っていた。
そして、それは今も変わらない。
変わっていない……はず。
でも。
斎にとって私はどうなのだろうか──。
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