scene.1

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異性の幼馴染というのは、とても厄介な代物だ。 小さい頃はただの仲良し。そのうち疎遠になっていくもの。 しかし、疎遠にならなかった場合──。 年頃の男女に“友情”は存在するのか。 存在してほしいと思っていても、いざ自分に置き換えてみると難しい。 私、香月舞(かづき・まい)の幼馴染というのが、とても出来た、いや、出来すぎなくらいの人物なのだ。 まず、礼儀正しい。幼い頃から品行方正を絵に描いたような礼儀正しさに、周りの大人達はメロメロだった。 次に、スポーツ万能。特にテニスに秀でていて、高校生になった今では名の知れた強豪校に通っている。部長らしい。 にも関わらず、成績優秀。一体いつ勉強しているんだと頭を捻りたくなる。 部活の練習がかなりハードなはずなのに、成績も常に上位をキープしているというのだから嫌になる。 トドメは、眉目秀麗。 物心ついてからは、常に女の子が彼の周りにいたのを目にしてきた。 笑ってしまうくらいの四文字熟語のオンパレードな上、面倒見もいいとくれば、ダメ押しもいいところだ。 しかし、惜しむらくは、その仏頂面。 お世辞にも社交性があるとは言い難く、周りに騒がれるのは本人的にものすごいストレスらしい。 幼い頃は何とか頑張っていたようだが、年を経るにつれ、そちらの努力は止めてしまった。 そして現在。 彼の周りは昔に比べて静かになった。 でも私は知っている。 単に近場で騒がれなくなっただけで、遠目から女子にもてはやされ、しかも今ではテニスをやっている男子からの視線も集めている。 私の幼馴染、篠宮斎(しのみや・いつき)。 昔から、私は、大人からも一目置かれるような斎を頼っていた。 同じ年なのに、まるで兄のように慕っていた。 そして、それは今も変わらない。 変わっていない……はず。 でも。 斎にとって私はどうなのだろうか──。
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