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その声があまりにも若かったので、親子ではないなと直感的に判断した。成人してもいない気がするから、おそらく姉弟だろう。いや、姉妹だろうか。
赤子の泣き声の合間に、女の声がする。
たのんます。たのんます。だれでんよか。たのんます。
抑揚はない。赤子の声が火が付いたように激しいものであるのとは対照的に、女の声はつぶやいているような小さなものだった。本当に、耳をよくすまさないと聞こえない。
私は顔をあげようとして、やめた。
ただのサラリーマンにできることなど何もない。
たのんます。たのんます。たのんます。だっか、こんこにみんばください……。
私の横を、声だけが通り過ぎる。
暗くゆるい長崎の坂道を、ゆっくり下っていく。
72年も経とうというのに。
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