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――20年後。
「ハァ……ハァ……」
息が苦しい。
意識も朦朧としていた。
目の前には、炎上する軽自動車。
直前まで俺が運転していた車だ。
周りは騒がしく、消防隊が懸命に消化活動を行っている。
そうか。
事故ったんだ。
後方から追突されたんだ。
どうやら、俺だけ助け出されたみたいだが……。
ダメだ……!!
あの中には、まだ人が!!
俺の嫁と子供が残っているんだ!!
このままでは、愛する家族が焼け死んでしまう!!
何よりも大切な俺の家族が、無くなってしまう!!
それは、ダメだ!!
それだけは、絶対にダメだ!!
消防隊が必死に救助活動を行っているが、このままではマズい!!
俺は叫ばずにはいられなかった。
誰か……!!
誰か……!!
「誰か助けて!!」
その時。
「よう
何かお困りかい?」
俺は……いや、俺達はその声の主によって助けられた。
一度きりしか、助けてくれなかったけど。
ソイツは俺の全てを救ってくれた。
きっと、今も誰かを救ってやってるんだろう。
ここは、人生に一度きりの救済措置が施されている世界。
俺がそれを知ったのは、年老いて死ぬ間際だった。
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