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次第に嗚咽が混じって聞き取り辛くなっている言葉に、オレは必死で耳を傾けた。
「あかちゃんのせい…?」
「 …。」
「あかちゃんって…なに?」
「 …。」
「おにいちゃんって…っ。」
「うん」
「おに…ちゃん…って、なに?…そんなの、…そんなのいらないよーーーぉっ」
ぅぁぁあああーーーーーーーー……っ
きっと他にも、言葉にできない気持ちがあるんだろうが、
くうはここで声を上げて泣きはじめた。
上擦って泣きじゃくる合間に、
一言、また一言と何かを言うのだけれど、聞き取れたのは "ママ" と "ごめんなさい" だけだった。
オレにはもう、言葉で答えてやることはできなくて…。
ただ泣き崩れた小さな身体を、ゆっくりさすって撫でてやることしか思い付かなかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
30分くらい経っただろうか。
落ち着いてきたくうに、歩けるかと声をかけると頷いた。
鼻をかんで、顔を洗わせて、オレはくうのリュックを持って玄関で待つ。
…18:43。
下手すると乗り換えで時間くって、実家に着くのは21時頃になるか。
連絡をして状況も説明したし、時間以外は問題ないだろう。
…腹減ったな。
ヨタヨタと、玄関きたくうの手には、先日オレが買ってきた赤い歯ブラシが握られていた。
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