第1章

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くうは食べながら、途中で俺に寄りかかって眠ってしまった。 食べかけのオニギリはくるみ直してしまった。 電車から見える外の景色はただ暗くて、家の明かりがチラホラ。 背にしている方にふり返れば、街の明かりでそれなりに明るい。 すっかり夜だった。 人生初、5歳児をおぶって電車を降り、乗り換えの為にホームを歩いていた。 途中チラリと、天井の隙間から月が見えた。 満月かと思うくらい丸くて、高いところで白く光っていた。 乗り換えた電車からも月は見えていて、ずっと追ってくる。 子どもの頃、同じように、思ったことがあった。 隣で寝息をたてる子どもに腕をまわして、横切った記憶を引き留めて手繰ってみた。 何の事はない、とてもしょうもない思い出。 小学校2~3年位の頃。同じ様に丸い月を「追っかけっこだ、勝負だ!」なんて、車の後部座席で何度も騒いでいた。 その時一緒に居た家族の誰かが、パンケーキみたいだと、唐突に言い出したんだ。 丸くて、黄色っぽくて、ブツブツしているところが、まるでパンケーキだと。そこで全員パンケーキが食べたくなって、帰ってすぐに皆で作った。 その時初めて焼けていくところを見て"ブツブツ"にも納得した。
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