第1章

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「ドレミファドレミ~♪」 突然歌い出したのは、シチューを頬張る甥っ子だった。 「赤い電車はうたうんだよー。ドレミファドレミ~♪」 「え…?」 「あー、ドレミファインバータって言って、京急線が発車するときに、時々音階のメロディーがするのよ。くうはどうしてか、ソラシドーって言わないんだけど」 シチューを口へ運ぶ息子を観察しながら、姉が捕捉、説明する。 「あのね。…モグモグ…ボキュは赤いの…モグモグ…ひゅきなの。でも、…モグモグ…青いのもひゅきー」 「くう、口の中カラにしてから喋りな」 「うん、もうないよ」 そう言ってまた、シチューを口へ運び 「ケイきゅんは青いの…モグモグ…ひゅき?」 「くう、おくち」 「もうないよ」 …そう言ってる時はカラなのに、何故この子はシチューを口にいれる度にまた喋るのか…。 わざと? 「入ってる時は喋らないよ、お行儀悪いです。ちゃんと聞いてる?」 「…あのねママ、今日もおいしいねぇ。昨日もおんなじだけど、しあわせだねぇ。ボクね、パンケーキだともっとしあわせと思うんだぁ」 「はいはい、そーね」 「ママ、"はい"は一回だよ。おぎょうぎわるいです。ちゃんときいてる?」 (うわぁ…。あぁ言えばこう言う…。) というか、何気なく非難して、何気なく注文してる。 一歩引いて見ているとチラリと視線を流した姉と目が合った。 「こういうやり取りしてるとさー。なんか昔を思い出すんだよねぇ。…あんたみたいで。」 「えっ?!オレ?なんで」 「ケイくんはー」 「はい?!」 「けーきゅーのケイくんでしょ?…おそろいいいなぁ。…はぁ」 (え、何急にナイーブなため息) そしてまたシチューを口へ。 コロコロ変わる話の展開にもえ全然ついていけないんですが…。 あ、でも……… 「くうもお揃いじゃん? 」 「え!」 驚きでシチューをこぼすくうに、 9のもうひとつの呼び方を教えてやった。
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