【長女②】

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 とある休日。  妻が夕飯の支度をしながら声を掛けてくる。 「ねえ、醤油が無くなっちゃったから買ってきてよ。あっ、卵と豆腐もお願い」 「はいよ」  財布を持って玄関のドアを開けると、予想外の出来事が待っていた。 「パパ、もう大丈夫。レナに任せて!!!」 「……何が大丈夫なんだ? それと、いつの間に外へ出たんだ?」  右手にはおもちゃのお金、左手には小さな買い物かご。首にはママが使うエコバックを掛け、お出かけ用の帽子を被ったレナが待ち構えている。 「すぐ帰ってくるから、レナはお留守番してろ」  その言葉を聞くと、レナは私に近づき耳打ちした。 「お菓子買ってくれたら、後でチュウしてあげるよ!」 「……そんな台詞、どこで覚えたんだ?」 「うーんとね。ママが見ていたテレビ番組で、綺麗な服を着たお姉ちゃんが言ってた!」 「そうか……連れてってやるから、その言葉は忘れるんだ。いいな?」  仕方なくレナを連れ、近くのスーパーへと車を走らせる。  スーパーに着くと真っ先にお菓子コーナーへと走って行くレナ。 「パパ、これがいい!」  レナが差し出した物は、おまけが豪華な300円もするお菓子だった。 「レナ、よく聞くんだ。これはお菓子が美味しくない。それよりこのマシュマロなんて絶品だぞ?」 「いやっ! それは子供が食べるお菓子だよ。レナは4才だからね。そんなお菓子じゃ納得いかないよ!」  1年前までは問題なかったのに、とうとう30円で4個入りのマシュマロでは納得してくれなくなった。  ここで妻がいればレナを説得出来たかもしれないが、残念ながら私しかいない。  誰か助けてくれ。  すると偶然居合わせたご近所のおばさんが声を掛けてきた。 「あら、レナちゃん。こんにちは。お父さんにお菓子買ってもらえるのね。こんないい物を買って貰えるなんて良かったわねえ」  余計な事を言いやがって。  頭ではそう思いながらも、私は笑顔で頭を下げる。  そして引くに引けなくなり、高価なお菓子を買ってしまった。  ――帰宅すると、私とレナは予想通りの言葉を浴びる。 「何でこんな高いお菓子を買ったの!? 甘やかしちゃ駄目でしょ! レナもご飯を食べずにお菓子ばっかり食べてるじゃない! これは没収します!」  こうして私とレナは力尽きた。
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