街角

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「何してんの?」 おれはびっくりして38センチぐらい飛びのいてしまった。 「んーいやべつに」 「まーたより道してんだ。先生におこられるよ」 「おまえが言わなきゃだれにもわからないよ」 クラス委員のミエは、そりゃもう口うるさくておせっかいだ。 こいつにはあんまり見られたくはなかった。 「時計屋さん?」 商店街のすみっこの、おじいちゃんがやってる時計屋だ。 あんまり売れないんだろう。 目ざまし時計なんて、店の外からでも何か古くさくてうすよごれて見える。 「うで時計さ。おじいちゃんが修理してるとこがさ。おもしろいんだよ。あのフタ開けてみてぇな。とうちゃんの時計いじりまわしたら、げんこつくらわされたもんな」 「そりゃおこられるよ。タカシこわし屋だもん。ヘンにさわったら二度とフッカツしないよ」 「ふん」 おれがこわし屋なのはまちがいない。 ふでばこもランドセルも笛も。 おれのもちものはみんなこわれてる。 時計屋のおじいちゃんがちらりとこっちを見た。 いつもしかめっつらだけど、ちょこっとだけわらったように見えた。 【完】
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