好敵手

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「おい、ユウジ!」 低いが、甘さと華のある声が背後から聞こえた。 「イヤだ」 「まだ何も言ってねぇ!」 振り返るまでもなく声の主はわかる。 生まれたのも数日違いなら、体格も頭の程度も似たようなものだ。 まさか同じ高校に通う羽目になるとは思わなかった。 従兄弟のシノブ。 女みたいな名前で幼い顔立ちをしていたが、高校生になって随分男らしくなった。 年の近い従兄弟同士だから、当然仲は悪い。 「話しかけんな」 「俺だってお前となんて立ち話なんぞしたくない」 「座ってだって走ってだってイヤだ」 「だから聞けって」
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