Gの戦慄

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その夜、私は書斎に居た。ひたすらディスプレイに向かう、いつもの仕事の時間。 「……だった、と。よし」 ここまで書いた文章に目を走らせ、保存をかける。 今日は随分と筆が進んだ。これならば締め切りまでに書き上げられるだろう。 (さて、そろそろ寝るか) 思い切り伸びをして、凝り固まった肩や背中の筋肉を解す。終了の操作をした所で、ふと背後から気配を感じた。 おかしい、この部屋には私しか居ない筈。けれど感じるのだ、私以外の気配を。 振り返るのが怖い。でも確かめないと。 恐る恐る後ろを振り返る。 スタンドの光がギリギリ届かない闇の中。そこに、じっとこちらを見つめる真っ黒な目があった。 「ひっ……」 喉から小さな悲鳴が漏れる。 奴はドアの前に居た。この部屋で唯一の逃げ道の前に。 いつの間に部屋に入り込んだのか。集中していて全く気が付かなかった。 互いに睨み合ったまま、時が流れる。ほんの数秒間だったのかもしれないが、私にはひどく長く感じた。 先に痺れを切らしたのは奴の方だった。 その場から飛んで、私との距離を一気に詰めて来たのだ。 慌てて手元を探る。対抗しうる得物は、何も無い。 駄目だ、もう逃げられない!! 「誰か助けて!」 それでも私は叫んだ、有らん限りの声を出して。
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