Gの戦慄

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その時だ。ドアが勢いよく開き、まばゆい光の中から救世主が現れたのは。 素早く振り下ろされた救世主の聖剣によって、奴は呆気なく息絶えた。 「何やってんのよ」 開け放たれた部屋のドア。そこには救世主一一もとい妻一一が、呆れ顔で立っていた。丸めた雑誌、という名の聖剣を手にして。 「もう、ゴキブリが出る度殺されそうな声出さないでよ。しかもこんな夜中に。ご近所に何事かと思われるでしょ」 文句を言いながら妻が部屋の明かりを点ける。視線を落とすと、奴はぺしゃんこになっていた。相変わらずの、見事な腕。 「でも、ホラー作家の死ぬ程怖いものがゴキブリだなんて、いい笑い種よねぇ」 奴の死骸をティッシュで包みながら妻は笑う。何とでも言え、怖いものは怖いんだ。 一一実のところ、私が本当に怖いのは、奴(ゴキブリ)じゃない。 じっと見つめる私の視線に気が付いたのか、妻は不思議そうな顔をする。 「何よ」 「…………いや、何でもない。ありがとう」 「? どういたしまして」
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