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椎名さんは腕を掴み僕をベッドに誘う。
「せっかくだけど――今の僕は」
声を潜め
「もう使いものにならないの」
そっと頬にキスしてやると。
切れ長の大きな瞳がようやくパッチリ開いた。
「肌艶のいい顔して――」
「王子様が朝まで離してくれなくて」
「いい匂い」
「ああ、薔薇のせいだよ」
「薔薇?」
「起きたらバスタブいっぱいに」
ぬるめの湯が張られ
色とりどり薔薇の花が。
傍らには搾り立てのライムジュース。
ティファニーの小箱からは
目覚めのショコラが2粒。
ついつい甘い溜息が零れる。
それが
九条敬のスタイルだ。
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