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午後からちょうどいい具合に
しとしととセンチメンタルな雨が降り出した。
否が応にも人の感情を揺さぶる
匂い立つような雨だ。
純白のブラウスに青い傘を広げて
教授室の前で待つこと数十分。
傘を持つ指先が冷え
肩先がしっとりと雨に濡れた頃。
「和樹くん……」
「どうも」
講義を終えた
花村先生がやって来た。
僕を見るなり気まずそうに唇を噛むけれど。
そこは大人だ。
「僕のクラスにいなかったね」
何事もなかったように言って
教授室のドアを開けた。
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