ぜろ

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暗闇の中から声がした 「ん?」 道の脇を見ると、仔猫だった。 「みゃー」 ダンボールの中からつぶらな瞳で私を見つめる。 思わずしゃがみこんで頭を撫でた。 「可愛いねー。」 「本当可愛いよね。そいつ」 突然の声に驚く。 振り返ると、青年が立っていた。 「えっ?」 青年が猫を抱いてしゃがみ込む 「こいつ、めっちゃ人懐っこいの」 笑顔が眩しい 「へー」 ただ、単調な返事しか出来なかった 黒髪で臙脂色のパーカーにジーンズ。爽やかという言葉が似合いそうなイケメン… いやいや、何を考えてるのだ私は。 合コン引きずってるんだな…きっと 「おねーさん、こいつ飼えない?」 青年の言葉に我に返る。 「え、私のアパート、ペット禁止だから…」 「そっか…一人暮らしなの?」 「うん…」 「じゃあさ、」 青年が私の後ろに回り込む。 急に抱きしめられる。 「おねーさん、俺飼わない?」 「ちょっ…」 突然のことで、抵抗すら出来なかった。 「俺、人懐っこいよ?迷惑かけないし、いい子だから」 「は?」 なんで私は夜道で青年に抱きしめられてるんでしょうか? 「なんで名前も知らない初対面の男を飼…飼う?まず、飼うっておかしいから!」 「ごめん!飼うってのは冗談で。本当に。泊まるとこなくて…」
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