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「課長の馬鹿やろう――! 」
「(糞! まただ)」
近所の公園で酔っ払いが騒いでいる。
「(まったく、夜中に騒いでいるのじゃない! 近所迷惑だって分からんのか)」
「畜生――………………ワァ! 」
もう我慢できん。
私は玄関脇に置いてある、杖と懐中電灯を手に公園に向かう。
同じように頭に来たのだろう、隣のアパートから、バッドを握りしめた学生が駆け下りてくる。
彼は私に気が付くと、頭を軽く下げ声をかけて来た。
「いい加減にして欲しいですよね」
「ああ、まったくだ。
毎夜毎夜怒鳴り散らしやがって、今夜こそ叩きのめしてやる」
公園に着き、公園の中を懐中電灯で照らすが誰もいない。
学生が呟く。
「畜生、逃げられたか?」
学生と顔を見合わせ帰ろうとした私の耳に、何かが聞こえた。
「…………………………」
「うん?」
「どうしました?」
「何か聞こえないか?」
「え?」
耳を澄ませ周りを見渡す。
「タ、タ、タスケテ、ダ、ダレカタスケテ」
「あ! 本当だ、人の声が聞こえる」
もう一度公園の中を懐中電灯で照らし、目を凝らす。
「(誰もいないな……)あ! 居た」
公園に備え付けられているゴミ箱の中に、男が身体をU字にして落ち込んでいて、助けを求めていた。
「ダレカタスケテ」
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