序章 転移

3/10
前へ
/53ページ
次へ
 取り合えず、河辺でも見つけられたら良いんだけど。  耳を澄ませてみても、  流水の音なんか聞こえない。  うだうだ考え込んでいても埒が明かないし、木に印を付けながら進もう。そうしておけば、もう迷うことの無くこの場に戻ってこれる。  僕は手頃な石を手に取り、  木に矢印を書きながら進んでいく。  僕の体内時計では、既に午前十二時は過ぎており、  エネルギー源を寄越せと胃が喚き始めた。  サバイバル知識に疎い僕には、どの草が食べられるのか分からない。なので、空腹を満たそうにも食料を確保出来ずにいた。  空腹に耐えながら、歩くこと数十分。  水の流れる音が聞こえてきた。  僕は、走った。水と言う名の希望に向かって。  水があれば空腹を満たせなくとも、  紛らすことなら出来る。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加