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「うわっ、うまそうっ!」
喜ぶヒロを尻目に、今度こそ自分の分の米を盛りにかかる。
(まぁ今日ぐらいは、いいか)
ヒロの家族全員インフルエンザは、今年で何年目だろう。
気づけば毎年そう言って、俺の家に上がり込んでくる。
多分、年末を一人で過ごす俺を思ってのことだと、気を聞かせてくれているのだと思っている。
(大きなお世話なんだけど、な)
それでも、感謝しないことはない。多分。
「野下ぁ~なにボーッとしてんだよ」
振り向けば、親友とは言わないが、人がいる。
ご飯を食べて満足したのか、こたつに潜り込もうとしているヨリもいる。
一人で過ごす年末よりは、よっぽどいいんだろう。
「おーい、全部食っちまう、ぞって、そんな恐い顔するなよっ!?」
しかめっ面をキープしながら席につく。
じんわりと膝に乗ってきたヨリの暖かさが心地よい。
「食い物の恨みはな、こえーんだよ」
今日だけは、特別だ。
差し出されてもいない空の器を引き寄せて、白菜と餃子を盛る。
驚いたとでも言うような表情が気になるが、無視をする。
(来年も良い年になるといいなぁ)
餃子と白菜を口に入れて幸せを噛み締める。
(とりあえず、来年も白菜は持ってきてもらおう)
緩みそうになる頬を口一杯のご飯で誤魔化しながら、そう思った。
fin.
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