今日だけは。

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「ホタテと鮭は、今度の鍋で使うとして」  あれは味噌仕立てで、石狩鍋風にしようかチゲ風にするか。 「悩むな……なー、ヨリ」  すり寄って来たヨリを抱えあげて、視線を合わせる。  わかっているのかわからんのか、にゃぁと鳴く。  うん。可愛い。 「お前、本当に飼い主に似なくてよかったなぁ」  しみじみ言うと、ヨリが俺の鼻を舐めた。  ネコ科特有の舌の感触が鼻に残る。  その時、何かが落ちた音がした。 「……の、野下」  音の方を見れば、ヒロが居た。 「ヨリをいつの間に手玉に取りやがった……俺、ヨリに舐められたことないのにっ!!」  そのまま膝から崩れ落ちる様をじっくり見てから、俺は口を開く。 「おかえり、何処行ってたんだ?」  ヨリの手を借りて手招きすれば、ヒロは落としたビニール袋を前屈の要領でズルズルとこちらへ寄越した。 「……これって」 「高木さんちの特性キムチ」  ぶすくれた顔を向けてヒロが答える。 「餃子鍋の必須アイテム……わざわざ分けてもらってきたんだぞ~」  そして何を思ったのか、そのまま「ほふく前進」して俺の近くまで来ると、頭を差し出す。
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