7人が本棚に入れています
本棚に追加
19世紀のロンドン
自動車というものが流行るこの霧の多い都市で、ぼくは働いていた。
「おいお前。永遠の命欲しくねえか?」
ぼくはいじめられっ子だった。
馬車が行き交うこの町に、友達が一人もいないぼくは、いつもリクたちにいじめられていた。
「いらないよ」
「そんなこと言わないでさ。きっと、面白いぞ。何たって未来永劫死ぬこともねえし、飯も食わなくても生きていけるし、毎日楽しく遊んでいられるんだぜ」
リクは金髪の間に黒髪が少しだけ混じったスコットランド出身の男の子だった。
ぼくは生粋のロンドン生まれ。
金髪の少し太った体格の12歳だった。
その日は辛い煙突掃除の帰りに、リクたちに声を掛けられていた。
リクの仲間は3人いる。
ロイとハクスとフレンジャーだ。
三人ともそばかすだらけで似たり寄ったりな顔で、違うのは身長くらいだ。
「西の方には噴水があるだろ。広場の。その奥に森があるんだ。」
リクが言うと、
「最近、でてきたって話だぜ。魔法かなんかだよ」
フレンジャーが面白そうに微笑み。
残虐な顔をしている。
子供特有の虐げることが大好きな顔をしていた。
抵抗しようとしたぼくは頬をリクに殴られ、痛い頬をさすりながら何もできずに西の森へと連れて行かれた。
様々なハットの男や膨らみのあるスカートを履いた服装の女などの優雅な通行人や、馬車と自動車が行き交う大通りを歩き、ペットの散歩をする人が多い噴水のある広場を抜けた。
通行人は皆、活気があり華のロンドンを満喫しているようだ。
「ほら、あそこの森だ。さっさと行こうぜ」
日差しがささない暗闇が覆っている森だった。
雑木林の間を歩いて、ぼくは深呼吸をする。
永遠の命。
そんなものは、ぼくはほしいわけじゃなかった。
それは、永遠にいじめられるのならば地獄と同じ世界なのではないだろうか。子供のままの姿では、未来を見ようと想像もできないものを見ても、あまり理解もできずに知識は時と一緒に過ぎ去るものではないだろうか。
雑木林の間を抜けると、小枝や葉っぱでボロボロの服が更に汚れる。リクは嬉々として僕を暗い森の中を連れまわした。
時折、ぼくの背中を蹴るロイとフレンジャー。
ハクスはぼくの頭に大きな昆虫を乗せて遊んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!