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第一ステージ
懐かしい。昨日、来たのに。何年も経ったみたいだ。広大な砂漠を見て、感動すらした。束の間、自分が魔法を使えないと忘れる。黄土色の砂があちこちで盛り上がっていくのを見て思い出す。引き換える物がない。戦えないし、守れない。
並ぶ柱の向こう側。砂の化け物ができていく手前。一振りの剣が宙に浮いている。切っ先が天を差す形で。昔のパートナーが持っていた剣に似た。柄と剣身の間に楕円の赤い石がはまっている以外、飾りのない銀色の。覚えている。追ってくる砂の化け物を引き換えたのだ。魔を絶つ剣と、金貨、水晶に。後の二つは持って行かれた。自分達に攻撃を仕掛けてきた船に、乗っていた人達に。最初の船が追うのをやめたのは、宝が手に入ったからだ。魔を絶つ剣は、数多くあるから置いていった。剣を使えば…。
「あの剣を使えば、砂だるまは倒せるの?」
「あっ、はい」
尋ねてきた、新しいパートナーが。国民的アイドルグループのメンバーの一人。主催者側が勝手に選んだ。頷くと、彼は外に走り出す。跳ね上がって、左手で柄を握る。落ちる中、振り下ろした。
石が燃える。発した赤い光が剣身を包む。切っ先からまっすぐ伸びる。正面の砂だるまに、赤い縦の線が引かれる。真っ二つに割れた。外側に倒れながら、左右同時に頭から崩れて砂に戻る。地面まで切り裂く。割れ目は、修復されなかった。
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