第1章

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今日はつくづくついていないと、須崎祐一郎は思った。   朝食で、目玉焼きをスーツのズボンにこぼしてしまい、慌てて湿らせたティッシュで拭いたがシミは残り、しかし家を出なくてはならない時間になったので、仕方なく着替えずに家を出た。 ああ、カッコ悪い。誰にも見られませんように。 京浜急行が上大岡駅に滑り込む。いつも乗る通勤特急ではない。 須崎は腕時計を見る。思った通り、いつもより10分近く遅い。 会社に着くのは定時ぎりぎりになる。 須崎が並ぶ乗車の列が前に進んだその時、ふいに胸ポケットのスマホが振動した。 出なくてもいいかと思ったが、一応スマホを取り出し画面を見ると、取引先の名前が表示されている。 何でこんなに早い時間に。 嫌な予感がして乗車の列から離れる。
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