25人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ。わかった」
ちょっと待って!
声にならないまま口をぱくぱくさせているうちに、豊臣は試合に戻っていった。男子が豊臣にからむ。
「ヒューヒュー豊臣、お前すぐ糸井沢のほうに走っていったけど、好きなのかー」
「はー? 俺は誰よりも紳士なんだよ。ってか糸井沢重かったわー」
「紳士はそんなこと言わねーよ、あはは」
「あいつ」
「足、見せて。手当てするから」
「お、おう」
足を触られて、どくんと心臓が動いた気がした。平常心、平常心。そうだ。この間のこと、謝ったほうがいいかな。
「あ、あのさ」
「もう、気にしなくていいよ。この間のこと」
「え?」
「納得してるから。言えただけでいいんだ。むしろその、迷惑かけて悪かった」
「迷惑だなんて思ってないって! あたしのことを想ってくれる人がいる。それがわかるのは嬉しいことだよ」
「……そっか」
織田の表情が、少しほころんだように見えた。
最初のコメントを投稿しよう!