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「ようこそ!岸さん!」
先生が笑顔で出迎えてくれた。
彼女の隣に立つ、一人の男性が笑顔で会釈をする。
「初めまして。夫の敏男です。いつも、妻がお世話になってます。ようこそ、いらっしゃいましたね」
確か…
ご主人は、科学者だったわよね。
「こちらこそ!今日はお招き頂き、ありがとうございます」
私も緊張しながら会釈をした。
何て…お似合いのご夫婦なのかしら。
不倫とか一切無いんだろうなぁ。
「それで…岸さん。
いきなりで悪いんだけどね。今夜のディナー、もう少し時間がかかるの。少しの間、主人と居間でリラックスして待っててね」
と、先生はそこまで言うと奥に引っ込んでしまった。
私は、ご主人の案内で居間に通され、ソファーに腰を下ろした。
素敵な…一時だわぁ…。
夢なら…覚めないで。
ご主人は、笑顔で私に話しかけてくれた。
「実はですね。
僕は、人工知能の研究をしているんですよ」
「え?」
私は、少し驚いた。
「人工知能って…パソコンとかの事ですか?」
「いえ。それとは、少し違いますよ」
ご主人は笑顔で言葉を続ける。
「コンピュータは、プログラム以上の事はできませんが、人工知能はプログラムの内容から自分で考え、それ以上の事をするんです」
私が、ぽかんとしていると…
「お見せしましょう。少しお待ち下さいね」
と、ご主人は居間から出て行き、二枚のディスクを手に戻って来た。
「お待たせしました。
実は、まだ実験段階ですが人工知能の試作品は既に完成してましてね。その試作品に動物育成ゲームを作らせてみたんです」
見ると、居間のテレビの横に一台のゲーム機が有り、ご主人はディスクをそれに挿入すると画面を点けた。
画面には、ただの白一色を背景に一匹の猫が丸まっている映像が映し出された。
「わぁ!可愛い!」
「でしょ?そして、それから一週間後に再び同じゲームを作らせてみたんです。プログラムに一切、手を加えずに」
と、ご主人はディスクをもう一枚の方に取り替えると、再び画面を点けた。
「あ…」
私は、驚いた。
白一色だった背景が…
どこかの室内になっていた。
部屋には窓も有り、外には青空が広がり、遠くに駅らしき建物も見える。
何より…
中央で丸まっている猫…
毛並みの質感といい、左右非対称な耳といい…明らかにリアル感が増した映像になっているのだ。
まるで、デジカメで撮影したかの様に…。
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