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「音が見える?」
「音が色のついた模様で見えるんだよ」
「じゃあ此処に描かれてる模様って」
「その時見えてた音。風景を描こうとするといつもそんな感じになっちゃう」
「じゃあ今の私の声も……」
「ピンク色の星が重なってるみたい。ちゃんと音は聞こえるから話すのに問題ないけど。ヘッドフォンとサングラスがないと、目の前がぐちゃぐちゃになって気持ち悪くなっちゃうんだ」
だから『さくらみたい』か……。
何故私の名前を知っているのか疑問だった。しかし椿くんは私の声の事を言っていたのだ。ピンク色の星のような形。まさに、桜みたいだ。
私は椿くんをヘッドフォンとサングラスで、派手な格好をしている変な小学生だなと思っていた。しかしそれ等が無いとずっとこんな滅茶苦茶な世界を見続ける事になるなんて……。
絵に目を落としながら、私ならこんな世界を見続けると思うと想像を絶した。
「ヘッドフォンからはギリギリ外の声が聞こえるぐらいの音量で波の音が流れててこれである程度景色は落ち着くんだけど、それとサングラスで暗くして見やすくしてるんだ」
「でもこの桜の絵は、普通の……」
「何故かその時はハッキリと見えたんだ。三年前、たぶん小学校に入る少し前に弘明寺のお婆ちゃん家に来て、みんなで桜を見に行った時に見たんだ。パパもママも妹も、お婆ちゃんも……みんないて……」
「じゃぁ、お婆ちゃんに会いにここまで?」
「ううん、お婆ちゃんは去年死んじゃった」
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