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小学生位の男の子でリュックサックとスケッチブックを持って、いかにもピクニックか写生にでも行くみたいだ。ただ、ヘッドフォンと大きなサングラスをかけたちょっとチャラい感じが少々いただけない。『少し大人びてみたかった』と言いたげだが、彼の幼さの所為かアンバランスに感じる。
そんな少年が普通車専用の停止線で一人ぼっちで立っている。
えっ、一人? 両親は? 友達は?
そんな事を考えていると、私は後ろから快特電車の入口へと押し込まれ、人の濁流にのみ込まれる。その後も満員電車に揺られ人に潰されながら、私はあの少年の事を考えていた。 二度と目にする事もないかもしれない、その少年の事を。
しかし予想に反して翌日も少年は同じように上り線のホームで普通車を待っていた。次の日も、その次の日も……。
そして九月になり、それでも少年は当たり前のようにいつも同じ時間、同じ場所で電車を待っている。
夏休みも終わっているだろうに……私立の小学校にでも通っているのかもしれないが、この辺りに私立小学校なんてあったっけ?
見かけるたびに私の少年への興味は大きくなっていく。そしてその疑問が明らかになるのは意外とすぐ。
九月の最初の土曜日、私は意外な所で少年を目撃したのだ。
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