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「よかった、探してたんだよ」
突然の事にその子も二人の警察官も驚く。
「すみません、この子私の甥なんです。普段は海外に住んでて、夏休みで遊びに来てるんです」
「貴方の……甥御さん? キミ、本当にこの人はキミのおばさんかな?」
警察官はそうその子に視線を合わせて尋ねる。明らかに私は疑われていた。
「どうなんだい? この人は本当にキミの――」
再び問うた警察官を前に、不意にその子は私の背に隠れ、私の服にしがみ付き怯える。まるで見知らぬ人に声をかけられて急に怖くなった子供のような……。
「あの、もういいですか? この子、日本語もあまり得意じゃないので」
警察官は二人とも最初は困っていたが、「今度からは目を離さないで下さいね」とのご忠告だけで済んだ。
私は頭を下げるとその子の手を取り、慌てて駅の方へと逃げだした。
駅の近くまで来て、周りに先程の警察官がいないのを確認すると、ドッと疲れが押し寄せて、思わずため息が出た。
「はぁ……めちゃくちゃ焦った」
私がそう呟くとその子はそんな私を見上げながら、
「さくらみたいだ――」と呟いた。
私は驚く。なんでこの子は私の名前を知っているのだろう――と。
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