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バスはカタカタと揺れながら、三浦半島の先っぽに向かった。 バスから降り、少し歩くと、海が広がる。 気持ちのいい風が吹き、水面がキラキラと光っている。 海は大きくて、広くて、ゆったりとしていた。 男は適当な岩に腰をかけ、買ってきた缶ビールをプシューっと開けた。 お疲れ様でーす、カンパーイ。と心の中で言いながら、ゴクッゴクッと飲んだ。 男は、大好きな海でお酒を飲めて、最高の気分だった。 海を眺めていると、不思議と嫌なことが忘れられて、心が和んだ。 少し遠くで小学生くらいの男の子が遊んでいた。 男の子達は、小さなカニを追いかけて捕まえていたが、なかなかうまく行かないようだった。 そんな様子を見ながらビールを飲んでいたが、空になり、暇になった。 男の子達がだんだん近くに来たので、男は余ったさきイカを男の子たちにあげた。 「これでカニを釣るといいよ」 「釣るってどうやって?」 「こうやるんだよ」 男は立ち上がり、潮溜まりの近くににしゃがみ、岩の間にさきイカを突っ込んだ。 小学生たちが、興味津々で覗き込んだ。 「みんな、静かにするんだぞ」 ジッと息を潜めてまっていると、カニのハサミがチョンチョンと、岩の隙間から出てきた。 さきイカに気づいたカニは、最初は警戒しながら、さきイカに触れては岩の隙間に隠れていたが、次第に触れ方が大胆になり、ガッ!とさきイカを掴んだ。 今だっ!男は少しづつ力をかけて、カニをさきイカで引っ張った。 カニと男の綱引き勝負だ! 小学生たちも、男も、目をキラキラさせながら綱引きを見ていた。 だんだんカニは岩の外に引きずりだされ、ついに姿を完全に表した。 「それっ!捕まえて!」 男は小学生にそう言うと、小学生は必死にカニを追いかけて捕まえた。 「おお!やったな!」 男はニンマリ、子供のように笑った。 小学生もすごく嬉しそうに、 「おじさん、すげー!俺にもイカちょうだい!」 「俺にも!」 「俺にも!」 と口々に言った。 小学生にさきイカを分けながら、小学生と一緒に、男は夢中でカニを捕まえていた。
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