その子どもは運命を分かつ

2/8
前へ
/54ページ
次へ
「お前、次の試合で負けたら、もう後がないぞ」  ジムの会長からそう宣告されたのボクサーがいた。  所属ジムは別。実力は互角。熾烈な戦いを繰り広げ、二勝二敗のシーソーゲームとなっている。  拳を交える毎に、好敵手として密かに相手を認めていた二人は、奇しくもその"最後になり得る試合"の対戦者となった。  ――いつも勝つことだけを考えて試合に臨んできたし、今度の試合だってそうだ。    だが、もしかすると次が最後の試合になるかもしれない。この試合でアイツに勝たなければ、俺のボクサー人生が終わってしまう。  ――これは負けられない戦いだ。    (オレ)はこの試合に全てを懸ける!  後に引けない戦いを前に、夏亥(なつい)巳冬(みふゆ)は決意する。  それぞれが次の試合に勝つために、肉体を鍛え、厳しい減量に耐え、戦いに臨む者としてその心身を研ぎ澄ます。ここまでの心理や行動は、多少の相違はあれど、両者共にほぼほぼ変わらない。  だが、試合の一週間前、二人はその勝敗を分かち得る"ある人物"と出会うこととなった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加