第1章

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 健太からの久しぶりのアクションに、これまでの不安だった気持ちの半分くらいはほっとする。すぐに電話をかけるが、なぜか出ない。  画面を切り替えると健太からメッセージが届いていた。 「ごめん、今日は亜津子に会えない。ほんとにごめん」  目は文字を追って、頭でも文章を読めているのに、その意味を理解するために何度も読み直した。次は、文章の意味は分かっても、状況が理解できない。再度電話をかけるが、出ない。どうやら健太は電話に出るつもりがないということに気づく。メッセージを打とうとしていると、健太から先に届いた。 「本当に本当にごめんなさい。好きな人ができました。」 さっきよりも長いこと、その文章を眺めていた。 「だれ?」 いろいろ聞きたいこと、言いたいことはあったが、まずその言葉が出てきた。 「会社の人です」  ああ、そうか。と、この1ヶ月の健太の様子を考えると、納得する部分はあった。それから、さっき健太を心配していたときの3倍くらいのスピードでいろんな思いが頭をかけめぐった。これからどうしよう、なぜ今それを言うの・・・  慣れない土地に、文字通り一人で放り出されて途方に暮れる。  その間いくつもの電車が停まって、人を降ろし、また乗せて、出発していく。ぼーっとした頭で、四国にいると上大岡という地名は聞いたことがなかったけど、こんなにたくさんの人が住んでるんだなあ、とふと思う。いやいや、それよりも今の状況をなんとかしないと・・ここまで来てるし、とにかく一度健太と会って話をしたほうがいい・・やっぱり家まで行こう、と考えたところで、あることに思い当たった。  もしかして、健太は今その「好きな人」と一緒にいるんじゃないか。昨日の会社の飲み会とやらにその人もいて、なんだかんだあって今一緒にいるんじゃないか。だから電話にも出ないし、急に会えないと言ってきたんじゃ・・それが事実かどうかわからないけれど、亜津子の心は、頭は、全身は怒りで満たされた。  健太の家に乗り込んで、健太と、その「好きな人」にめちゃくちゃに怒りをぶつけたかった。私をこんなひどい扱いをして、苦しめている裏で幸せな二人の関係が始まっているなんて!   
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