【1】元カレと元カノ

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「――三浦、か」 「そう。覚えていてくれた?」 小さくため息を漏らし、彼、尾上慎一郎は言う。 「バカも休み休み言いたまえ。私は、同級生を忘れるほど耄碌してはいない」 「同級生、かあ」ははっと三浦は笑った。「元・彼女、とは言ってくれないんだ」 慎一郎は顔を引き締める。それを見逃す三浦ではない。 「あら、恐い顔しちゃって」あははと三浦は畳みかける。 「怒った?」 「怒ってなどいない」 「あら、でも、ムッとした顔してるくせして?」 それには彼は応えない。 三浦はバスが消えた方向に顎をしゃくった。 「新しい彼女?」 見られていたのか。 どこから? 慎一郎は沈黙を持って返事とする。 「まるで映画かドラマか何かのワンシーンみたいだったわね」三浦は彼の意図にお構いなしだ。 わかっていた、彼女ならそういう態度を取る。 「どうしてここに」 慎一郎は話題を変えた。 「決まってるでしょ。宿泊してるの。ここにいるのは偶然よ。あの子、あなたの相手にしてはおとなしすぎそうだったけど。趣味変わったのかしら? いつまで続くことやら」 「君には関係ない」 「そうね、私には関係ない」 「彼女は――妻だ」
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