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恋多き女・三浦は、あっという間に恋人を作ったと思ったら離れた。
どんなに長くても一人の男と一ヶ月以上続いた試しはなかった。
別れたあ―っ、失恋したああ―っ。
深夜だろうと何時だろうと一切お構いなしで、わーっと泣きながら慎一郎の家へ電話をし、何時間も繰り言を言い疲れて寝入るまで付き合わせた。
最初は悪友同士だったのが一線を越えたのはあっという間だった。セックスは会話や食事と同じように、コミュニケーションのひとつだ。
それに、若い男と女がふたりきりで夜が更けた室内にいたら、することといったら相場が決まっている。
三浦は、友人の頃も恋人になってからもしなかったことがある。
彼の私的生活に深く入ろうとしなかった。電話は別だ、深夜だろうと早朝だろうと平気でかけてくる。しかし、彼女は彼の自宅へ行きたいと言ったことがない。三浦は慎一郎の住まいがどこか、本当に知らなかった。訪ねたいとも言わなかった。
彼が知るほとんどの女は、深い関係になると世話を焼きたがり、やれ弁当だ、食事を作るなどの理由をつけて彼の縄張りに入ろうとした。
自分のテリトリーに入り込まれるのを好まない慎一郎にとって、少しでもその素振りを見たら現実に引き戻され、別れの一文字が浮かぶ。
「ああ、そうそう。そういうのわかる」
三浦は同意する。
「私もね、オレのオンナ面されるのたまらないの。冷めるのよね。だからお別れしましょとなるの。でも冷めてもしばらく好きな気持ちは残るから辛いのよ。寂しいもん。だから」
して、と三浦は口付けた。
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