【3】三浦冴子のプロフィール

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時には泣きながら、失礼なことに違う男の名を口にして、慎一郎に抱かれた。 後腐れなく過ごせるのならそれでもいい。 当時の三浦と慎一郎は似たもの同士だった。 が、子供はいつまでも子供のままではいられない。いつかは次の段階に進む。 慎一郎と三浦にも、お互いから卒業する時が来る。学業の卒業と進路決定の時期と重なった。 慎一郎は父親の希望通り大学院への進学が決まった。 三浦は白鳳に籍を置く一部のブルジョワ学生の例に漏れず、生活や食うのに全く困る心配がないお嬢様だったので、定職につかず、大学院へは習い事の延長で進み、留学した。 気ままな彼女は発想が柔軟で、日頃からこう公言して憚らなかった。 ネタならいっくらでもあるわ! 誰か代わりにやってくれるなら、提供してもいいくらい!  研究させてくれるならどこでもいい、学校以外でもどこか企業に入ってもいいのよ。 事実、彼女は成果を上げた。見事だった。 「いつまでも遊んでちゃいけないわね」 ある日、慎一郎の腕にもたれ、髪の毛の先で彼の胸をくすぐりながら彼女は言った。 尾上君は私と寝てくれるけど、抱きしめられた満足はくれない。 快感は一時だもの。 いった瞬間に死ねたらいいけど、人間簡単に死ねないし。 わかってる。あなたは私と生きる人じゃない。 だって、あなたはどこかここではない何かを見てる。今もだわ。 あなた、誰を抱いてるの? イギリスに発つ前、最後に過ごした夜に三浦は言い、それきりになった。
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