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もう帰ることはないと思っていた場所に戻り、交代でシャワーを浴びたら時刻は午前4時を過ぎていた。
いろいろありすぎて疲れているはずなのに眠くないのが不思議。
川崎がバスルームから出てくると、ソファでアイスコーヒーを飲んでいた私の隣に座った。
「……コーヒー、いる?」
「お前の一口ちょうだい。」
「足りる?」
「ん。」
「仕事、大丈夫かな?眠いでしょ?」
「心配するな。…でも、さすがに寝ないとヤバいな。湿布貼って眠るぞ。」
腫れた私の頬に湿布を施す川崎の手の震えはもうない。
それだけでどんなに安心しただろう。
「…よし、これでいい。」
「ありがとう。」
「…おいで香子。」
「…え?」
「いっぱい文句聞くから。」
手を引かれ、川崎の部屋へと導かれる。
黒で統一されたシンプルな部屋。
布団を捲ると、背中を押して入るように促す。
素直に横になれば、軽く頭を撫でられ笑顔を向けた。
蒸し暑い外。
エアコンのきいた快適な部屋。
ライトが落ち暗くなった部屋で、川崎が私の隣に横になった気配がする。
私の方へ身体ごと向くと、優しく頭を持ち上げてその下に自分の腕を差し込んだ。
「……香子……」
髪を顔から払い、輪郭に沿って指が滑る。
そして、頬を包まれ、顔を撫でる。
…この雰囲気、よく覚えている。
大室寛人と行動を共にしていた私が川崎に見付かり、その夜過ごした甘い時間。
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