オネダリー1『孤城の落日』

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「凛子。おいで。」 手招きしてそう言えば、葛城は笑顔で一礼して出ていった。 俺の傍に来た凛子に思いっきり笑いかけると、頭をグシャグシャになるまで撫でて。 「イタッ!鷹夜!やめてよ!」 「凛子、よく言ったな。偉い!」 「………へ?」 「今、自分の気持ちをちゃんと言えたじゃないか。偉いよ。それでいいんだ。 思っていたり感じたり考えたり、そういうことは全部口に出していけ。 偉いよ凛子。俺は嬉しい。」 「…嬉しい?」 「ん。凛子の気持ちを聞けたら、俺が喜ぶと覚えておけよ。凛子もそうだろ?俺も凛子と一緒だよ。」 「喜ぶ…嬉しい…うん。分かった。」 「凛子のドレス、俺が選びたかったんだ。誘ってくれてありがとう。」 「ホント?…ヘヘッ。」 少しずつで構わない。 俺の隣にいる意味を知って欲しい。 誉められて、ちょっと涙ぐむのはいつものこと。 こうして誉められて育ってないから、子供のように喜ぶ気持ちが溢れ出る。 すると、笑顔が固まった。 そして俺から目を逸らし、再度俺を見る。 見たと思えば逸らす、これを数回。 それからハッとした表情になる。 「…あ、お仕事中だった…」 「いいよ。何かあった?」 「ううん!大丈夫。後でいい。」 俺から離れて元の位置に戻ると、コーヒーを一口飲んで壁をボーッと眺める。 …ああ、これはいい傾向だ。 考えてることを纏めてる。年始、ホテルで過ごした数日間でよく見た顔だ。 "後でいい" ネガティブに聞こえるこの表現も、実はポジティブに考えた結論。 俺が仕事を終えるまではじっくり考えて、それから話そうとしている。 「じゃ、後から聞かせて?」 「ん。」 「俺は仕事するからもう少し待ってて。ドレス買いにいこうな。」 凛子に合わせて待つことは忍耐が伴う。 頭ごなしでものを言うのはご法度だ。 俺は凛子のためならいくらでも忍耐してやる。
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