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そして
帰りの飛行時間はジェット気流を逆行するので往きよりも時間が掛かった。
が、実際の時間よりも長く感じた。何回かウトウトとしては「何時間経った?」と思って時計を眺めても1-2時間しか経っていない。
機外から聞こえる「ゴー」という音は飛行機も頑張っているということを主張しているようだった。
「当機はこれから羽田国際空港に着陸の為に降下に移ります。」
機内の明かりが付けられて、シートベルト着用のサインが点灯される。
眼下には東京湾とその周りの京浜工業地帯の明かり。
(あー、帰ってきたんだなあ)
飛行機は更に高度を下げ東京湾を航行する船の明かりが大きく見えてきた。
機内の液晶画面に映し出される機外カメラが滑走路の誘導灯を映し出す。
ちょっとした衝撃と共にグランディング。
ここ羽田空港に再び戻ってきた。
出発したのは実質2日前だったが、そのときの私には何週間もの時間の様に感じられた。それだけ中身が濃く、かつ自身のこれからを左右するかもしれない重要な出来事だった。
タクシーウェーを走行する飛行機。
窓からは懐かしい羽田空港の姿。
「空港」とはよく言ったもので、長い航海から帰ってきた船乗り達が首を長くして到着を待ち望んだ「港」。現代の「港」は間違いなく「空港」だ。
そして私には新しいステージへの「羽ばたき」の場所。
初めて父が外国出張にこの地から旅立ってから半世紀。
この同じ場所から自分の新しい人生が始まろうとしていた。
機体は駐機場へと近づいて行く。
(面接の結果はどちらでも良い。できるだけのことはしたのだから。)
思いは既に家へと移って行っていた。
京急電車に乗り新逗子まで。
乗り慣れた電車であったが、今日ほど懐かしく思えることはない。
それから半年に一度は「あの本社」へこの「羽田空港」より足しげく通うことになることは、その時に私には知る由もなかった。
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