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ただ、
〝それはもう必要ないから”
と、私の財布から取り出した紙幣を悠馬は受け取ってはくれなかった。
なぜか私はそれを少し寂しく思った。
悠馬を取り巻く事情を知ることが出来た今、尚更に寂しく思ってる。
〝純粋な繭子さん”
私の事をそう言ってくれたけど、そうじゃない。
だって、食事でだって、身の回りのお世話だって、紙幣の受け渡しだって―…
一つでも、多い手段で、
あなたを繋ぎ止めていたいという気持ちが強い物になっている。
「―…なさい」
〝ごめんなさい”こんな女で。
と、そう密やかに懺悔をした時だった。
「椎原センセ」
声をかけられた。
この声は、岬先生。
悠馬を見送った朝から時間は経過し、今はもう学校で教師として働く時間。
二時間目の授業をおえて、職員室へ戻っている途中だった。
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