14、セン索

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ただ、 〝それはもう必要ないから” と、私の財布から取り出した紙幣を悠馬は受け取ってはくれなかった。 なぜか私はそれを少し寂しく思った。 悠馬を取り巻く事情を知ることが出来た今、尚更に寂しく思ってる。 〝純粋な繭子さん” 私の事をそう言ってくれたけど、そうじゃない。 だって、食事でだって、身の回りのお世話だって、紙幣の受け渡しだって―… 一つでも、多い手段で、 あなたを繋ぎ止めていたいという気持ちが強い物になっている。 「―…なさい」 〝ごめんなさい”こんな女で。 と、そう密やかに懺悔をした時だった。 「椎原センセ」 声をかけられた。 この声は、岬先生。 悠馬を見送った朝から時間は経過し、今はもう学校で教師として働く時間。 二時間目の授業をおえて、職員室へ戻っている途中だった。
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