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どうやら澪くんは絶対光ると信じていて、
さらに光るまで粘るつもりでいるらしかった。
ため息を吐いた。
それから「でも」と思いなおす。
ここまで純粋に何かを信じられる事も大切か、
と思いなおす。
でも勿論、光るまで一緒に待つのは嫌だった。
頭を掻いた。
OK。こうしよう。
妥協案を澪くんに話す。
「じゃあ30分だけ待とうか。
その間、お母さんはこの辺を回ってくるから、
澪くんはここにずっといる。それでいい?」
澪くんは水槽を見ながら、首を縦に振った。
「じゃあ30分後にここに集合ね」
そう言って私は立ち上がった。
もちろん完全に目を離すわけでは無かった。
同じ所にいるのは退屈なので、澪くんを中心に、
移動できる範囲を広げただけだ。
必ず目の端に澪くんを入れながら、他の所を回る。
澪くんと、自分の都合を両方叶えられる、
良い案だと思った。
それから私は零くんを目の端に入れながら行動した。
もちろん完璧にそうし続けることは無理だったので、
視界から完全に消えることもあった。
でも、澪くんが視界から消えた後は必ず、
クラゲの水槽の前に、小さな男の子がいることを確認した。
魚の国、2階をウロウロして、
1階をウロウロして、そうして30分が過ぎた。
一通りみてもうお腹いっぱいになったので、
2階のクラゲの水槽の前に戻った。
水槽の前の澪くんがいた。
澪くんは飽きたというように水槽から目を離し、
こちらに向かって走ってきた。
「じゃあ次のところに行こうか」
向かって来る澪くんに、そう言った。
澪くんは、顔を合わせないで、
私の横を通り過ぎて行った。
そんなに次の所が見たいのかな、
そう思いながら振り返り、澪くんの背中を追った。
その先には見知らぬ女性がいて、
澪くんは「ママ」と言いながら、その女性の手に飛びついた。
何が起こったのか、良くわからなかった。
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