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晩御飯が終わると、
「片付けは二人でやるよ」と言って、
弟と台所に立った。
私が食器を洗って、弟が拭いて棚に戻す。
連携プレーを以てすれば、
そう時間がかかるものでは無かった。
最後の茶碗を洗いながら、私は弟に言った。
「頼みがあるんだけどさ」
その言葉に弟は。「澪くんのことだろ」と答えた。
澪くんが弟と図鑑を見ていた様子を思い出す。
きっと、澪くんがホウセキクラゲを見たいという事は
知っているのだろう。話が早い。
次の言葉を言う前に、弟は言った。
「ねーちゃんが連れて行ってやりな」
完全に先読みされた。だがまだ策はある。
次の一手を。
そう思っているところに、さらに言葉が降ってくる。
「澪くんはねーちゃんの事好きなのに、
ねーちゃんは澪くんの事好きじゃないのか?」
喉まで出ていた言葉が、萎んで落ちていった。
「どういうこと?」
「分かんないのかな。澪くんは色々我慢してるよ」
手が止まる。
「お母さんと二人で家にいたかったのに、
実家に出かけるって無理やり連れていかれて。
それでもお母さんが喜ぶならって、我慢して。
嫌な坂道登りきった時だって、褒めて欲しかったのに、
澪くんじゃなくて、景色の方を見て。それも我慢して。
一つも分かってなかったんだな」
辛辣な言葉に、反抗心が湧き上がる。
「なんであんたに分かるのよ」
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