0人が本棚に入れています
本棚に追加
「澪くんから聞いたからだよ。全部」
なんで?その疑問を口にしたのは私ではなく弟だった。
「なんでねーちゃんは澪くんの事、何も知らないんだよ」
その言葉に、心が叫びを上げた。
私だって知りたいわよ!
でも私の心暗い部分は、その叫びを、言葉にしなかった。
弟はそれを察したのか「悪かった」ときまりの悪そうに言った。
「子供のことを知るのは、難しいことじゃないよ。
一緒にいてやればいい。
子供の目線で物を見て、話を聞いてやればいい。
だからねーちゃんが行ってやんな」
弟はそう言うと、私の手から茶碗をとって洗った。
それを拭いて食器棚に戻す。
「今日の夜は、澪くんはオレが預かるよ。一晩ゆっくりしな」
ありがとう。
ぐちゃぐちゃの気持ちの中でそう思った。
でもそれは、やっぱりぐちゃぐちゃになって
口から出るときには「バカ」になっていた。
それは弟に言ったつもりだった。
でも本当は自分に言ったのかもしれなかった。
よくわからなかった。
お風呂に入って、布団に入って寝た。
ひとりの夜は、寂しくなんて無かった。
最初のコメントを投稿しよう!