それぞれの相手

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「前からさ、田仲のこと可愛いなって」 「ぇえ?」 「それに、しっかり仕事も気配りできるし」 笹沢さんの顔が近づいてくる 「……俺じゃダメかな?」 「あ……の……」 笹沢さんは直属の上司。 仕事も出来るし、光とはタイプの違う美男子。 綺麗なアーモンド型の目に通った鼻筋 ぷっくりとした 唇がなんとも愛嬌があって 秘かに社内でも人気が高い。 笹沢さんは困惑する私に 「可愛いな、田仲……ま、考えてよ。 俺、本気だからさ」 と、微笑むと頭にポンっと手を添えて会議室を出ていった。 その日から数日私は笹沢さんの事ばかりを考えた。 光はもうすぐ彩香ちゃんと結婚して離れていく それを見送るより、誰かに愛してもらえたら…… 浅はかな考えだと思った。 笹沢さんに失礼だとも思った。 けれど、笑顔で見送る事が どうしても出来ないと分かっていたから。 (諦められないならせめて 他の人に目を向けよう) それに、笹沢さんは優しくて 仕事も出来るし尊敬できる上司 (好きになれるかもしれない。) 付き合うことを決めた。
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