それぞれの相手

6/9
前へ
/33ページ
次へ
完璧な挨拶、上品な振舞い、話口。 笹沢さんは厳しい父も母も納得させ 隣に居た光を唸らせると 結婚の話を持ち出したのだ。 「いずれは美空さんと結婚をしたいと思っております。 お付き合いをお許し頂けますでしょうか?」 「美空はどうなんだ?」 笹沢さんの言葉に父が口を開き 光が私をじっと見る 「……私は、そうなったらいいなって……」 光の視線にいたたまれなくなって 下を向いた。 「まぁ、それなら反対する理由もないよ、私はね ただ……」 父は口ごもり、光にチラッと視線を走らせた 「ひー。」 小さいときから、父は光をひー。と呼ぶ。 「はい、おじさん。ナニ?」 「お前はどう思う?」 なぜかそわそわした感じで父が光に話をふった。 すると、光は切れ長の瞳を細めて 妖艶に笑う 「あー。美空が保つなら、いいんじゃない? 何ヵ月も続かないよ。こいつじゃ。 じゃ、オレ部屋帰るわ。おじさん、佐和子さん またね。笹沢さん、お邪魔しました。」 私の頭をポンポンと叩くと光は家を出ていく 「なっ。」 クスクスと笑う父母に 苦笑いの笹沢さん。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加